ソマリのサイトを長く運営してきた中で、これまでたくさんのご質問やご相談のメールをいただきました。その中でも、トップ3に入るほど多かったメールが、「うちのソマリに赤ちゃんを産ませたいのですが...」というご相談です。具体的には、「お相手をどうやって探したらいいですか」「お宅の子が好きなので交配させてください」「お見合い相手となってくれるソマリを知りませんか」「指導してくれるブリーダーさんを紹介してください」等々。

これまでは個別にお返事を書かせていただいていましたが、メールではどうしても言葉足らずになってしまうことが多く、伝えたい事がきちんと伝えられたかどうか不安が残りました。そこで、今回このページに私達の思いを記しておこうと思います。

可愛い我が子の赤ちゃんを見たい、うちの子の血が流れた家族を増やしたい。その気持ちはとてもよく分かりますし、私達も同じです。ただ、実行に移す前に少しだけ考えていただきたいのです。ブリーダーではない一般家庭でのソマリの交配・繁殖には、その想いだけではなかなかクリアできない問題もあることを。

もちろん愛猫に出産させるか否かは、最終的に飼い主さんが決めることですが、ソマリを愛する者として、繁殖を考えていらっしゃるママさんパパさんに、一度このページを読んでいただき何かの参考にしていただければ幸いです。

ブリーダーさんが繁殖不可を約束させる理由

CFAナンバー

ソマリに限らずですが、通常、純血種の子猫をブリーダーさんから迎えた場合には、契約上「繁殖不可」の約束がされていると思います。うちの子達のCFAナンバーにも「NOT FOR BREEDING」と記載されています。(ブリーダーさんが私達が繁殖希望と勘違いして?申請してくださった長女のには入っていませんが(;^-^A)

一方、ペットショップから子猫を迎える場合には、その猫ちゃんの繁殖についてショップと約束事を取り交わすことは少ないでしょう。

では、ブリーダーさん方は、何故、一般家庭に子猫を譲渡する際「繁殖不可」で渡すのでしょうか。うちの子達の実家ブリーダーさんやお友達ブリーダーさんのお話を以下にまとめてみました。(ブリーダーさんによって、表現方法が少しずつ違いますので、あくまでも管理人編集ということでご了承くださいm(_ _)m)

【1】その品種について詳しく勉強していない人間による繁殖は、ブリーダーが計画交配によって作り上げて来た純血種特有の個性、レベルを下げる恐れがある。

【2】動物愛護管理法上の問題。(地域の条例によっても細部が少し違ってくるようですが、複数回の繁殖の場合は、営利目的でない個人であっても国への申請と登録が必要とのこと)

【3】純血種の繁殖においては、血統の見方・その種特有の遺伝性疾患・出産についての深い知識がないと、健康上なんらかの問題を持った子供が産まれる可能性が高くなる。また、母猫自身の健康や命までも失ってしまう場合がある。

上記した3項目は、どんな立場の方であっても、内容的にはご理解がいくのではないでしょうか。ただ、「うちの子はペットショップから迎えたからブリーダーさんへの義理立てなどないし、生まれた子をキャットショーに出すわけでもない」「一度だけの出産だし、子供は全てうちで育てます」という方にとっては、【1】【2】の理由は、“我が事”としては捕えられないかもしれませんよね。

では【3】はどうでしょう。「ソマリに多い病気」でも書いたように、ソマリは純血種の中でも、さらに人工種のニュアンスが強い品種です。どういうことかというと、アビシニアンの劣性遺伝子である「長毛」という個性をあえて固定しようとしたために、初期の時代には、近い血筋の交配(いわゆる親子がけ・兄妹がけ等の近親交配)が行われてきた歴史があり、自然界の中で繁殖してできた品種ではないのです。そういう意味では基本的な強靭さはアビシニアンのそれとは全く違うものだと思います。

近い血筋の交配が、よい特徴と同時に、遺伝性の病気などの悪い特徴も強調することはよく知られています。一言で言えば、自然交配の(神様が創った)猫よりも、計画交配の(人間が創った)品種であるソマリの方がデリケート。そのため、血統を充分に調べた上で親となるソマリを決定してあげないと、遺伝性の病気を持った子、奇形の子、体の弱い子等が生まれてくる危険性が高くなってしまうのです。(これを極力避けるために、多くのソマリブリーダーさん方が常に血統を吟味・研究しながら繁殖を行っています。残念ながら全てのブリーダーさんが...とは言えませんが)

生まれた子猫も全て自分が育てようと思われている方は、万が一、健常でない子猫が4頭5頭生まれたとしても、全ての子達を責任をもって生涯面倒みる覚悟はおありですか。また、そういうリスクを少しでも減らす為に、事前に、ご自身の愛猫の血統の情報や、お相手のソマリの血統の情報をなんとかして調べようという情熱はお持ちでしょうか。

ここ数年は、だいぶ血の濃さも緩和されてきつつあるといえ、まったく別のペットショップから迎えたあるお宅とあるお宅のソマリちゃんが、血筋をたどってみたら、実は兄妹や、従兄妹、ごく近いご親戚だったなどということは、珍しいことではないのです。一オーナーにとって、その血筋が何かしらの遺伝性疾患をもっていないかどうか、さかのぼって調べるのは至難の業なのではないでしょうか。

また、ソマリは、その10〜20%が血液型B型だと言われますが、B型の母猫がA型の子供を産んだ場合の、血液型不適合(新生児溶血)のことはご存知ですか。ソマリの遺伝性疾患といわれるPKについてはどうでしょう。全てに備えてケアしてあげても、出産の際に不測の事態が起こり母猫が命を落としてしまうことも、あり得ない事ではありません。

ソマリは一緒に暮らせば暮らすほど、愛おしい存在になります。それだけに、可愛い我が子の赤ちゃんを見たい、という気持ちになるのはよく分かります。ただ、実行に移される前に、これらのリスクがあるということだけは、どうか心に置いてください。

※ ブリーダーさんの中には、自身が指示したペアリングであるとか、その他の諸条件があえば、指導の下での繁殖を認めてくれる方もいらっしゃいます。そういうご縁の下での愛猫の出産であれば、リスクはかなり軽減されるのではないでしょうか。

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